民法(みんぽう)とは、民法典(civil code)、あるいは私法の一般法(この意味では、civil law)のことをいう。
前者の意味で用いられるのが一般的である(形式的意義における民法、狭義の民法)が、諸々の法規範のうちの一定領域を画して、その範囲のものを「民法」と総称することもある(実質的意義における民法、広義の民法)。
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本項において法律として解説している内容は日本の民法(形式的意義におけるもの(民法典))に関するものである。
民法について以下では、条数のみ記載する。
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目次 [非表示]
1 日本と各国の民法の関係
2 実質的意義における民法
3 形式的意義における民法 (民法典)
4 民法典の構成
4.1 財産法の構成
4.2 家族法の構成
5 民法理解の要点
5.1 権利の主体
5.2 債権と物権
5.3 契約
5.3.1 債権の発生原因としての契約
5.3.2 契約の成立
5.3.3 契約の効果
5.3.4 契約の解釈
5.4 債務の履行
5.4.1 弁済の提供の方法
5.4.2 弁済の提供があった場合
5.4.3 弁済の提供がなく帰責性がある場合 (債務不履行)
5.4.4 弁済の提供がなく債務者に帰責性がない場合
5.5 不法行為
5.6 不当利得
5.7 物権
5.7.1 抵当権
5.7.2 譲渡担保
6 関連する法律
7 脚注
8 関連項目
9 関連書
10 外部リンク
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[編集] 日本と各国の民法の関係
いわゆる旧民法[1]が、フランス民法(いわゆるナポレオン民法典)を範としていたのに対し、現在の日本民法は、ドイツ民法を手本にしたとされていた(これを、単に継受、あるいは法典継受という。もっとも、この時参照されたのは、制定されたドイツ民法そのものではなくドイツ民法草案である)。これに加え、大正期以後、日本法学がドイツの多大なる影響下に発展したことを受けてドイツ民法の日本法に与える影響ははかり知れない(これを、法典継受との対比において学説継受ということもある)。戦前の民法学の大家であった鳩山秀夫がドイツ民法の大きな影響を受けていたことや、日本民法学において長年にわたり第一人者であった我妻栄がドイツ民法的な思考方法で戦後日本民法の理論を構築したこともあって、現在の判例理論上のドイツ民法的な思考方法が散見される。
ところが、近年になり、日本民法は、その構成についてはドイツ民法典の構成に準じた構成がされているが、その内容についてはむしろフランス民法をベースとして構築されていることが指摘されるようになり(これは、旧民法がフランス民法を継受したものであったことのほか、民法典の起草を担当した三博士のうち、梅謙次郎と富井政章の二人の留学先がフランスであったという事情による)、学界にあってはこの観点からの民法理論の再構築がおこなわれている。この流れを牽引したのは星野英一や平井宜雄である。
なお、日本民法はイギリス民法からも若干の影響を受けている。ウルトラ・ヴィーレスの法理を規定した民法43条(法人の能力)や、Hadley v. Baxendale事件の判決で表明されたルールを継受した民法416条(損害賠償の範囲)のほか、民法526条(隔地者間の契約の成立時期)がそれにあたるとされるが、これらは起草を担当した三博士の一人である穂積陳重が、最初イギリスに留学したことによる影響である。なお、穂積は、イギリス留学の途中、依願により民法学論争たけなわであったドイツに留学先を変更した。
以上のことから、日本民法は、ドイツ民法を始めとした特定の母法に基づくというよりも、多角的に比較法の参照が行われて立案されたと評価される。
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[編集] 実質的意義における民法
民法典の中に若干異質な規定(例えば84条の3・1005条のような罰則規定)があること、および、民法典以外にも民法典中の規定と等質ないし極めて近接した性格の事柄を規律対象とする法規範が存在することから、このような概念が立てられる。
この場合、「市民生活における市民相互の関係(財産関係、家族関係)を規律する法」として、民法典の諸規定に加え、不動産登記法・戸籍法などの諸法もここでいう「民法」に含まれるものとされる。
ただし、いかなる特別法がこの「民法」に含まれるのか、必ずしも明確な基準があるわけではなく、学者によりその説く範囲は異なっている。そのため、この概念区分の実益に疑問が呈されることもある。
[編集] 形式的意義における民法 (民法典)
形式的意義における民法とは、制定法である「民法」という名の法律、いわゆる民法典のことをいう。具体的には、明治29年法律第89号により定められた民法第一編第二編第三編(総則、物権、債権)及び明治31年法律第9号により定められた民法第四編第五編(親族、相続)が民法典である(両者の関係については後述。)。全体が1898年7月16日から施行された。その後、日本国憲法の制定に伴い、その精神に適合するように(特に家制度の廃止など)後2編を中心に根本的に改正された。
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以上のように、民法典は、形式上は明治29年の法律と明治31年の法律の二つの法律から構成されると理解されることが多く、市販の六法全書なども両者を別の法典を構成するものとして扱うことが多かった。これに対し、法制執務上は、後者は前者に条文を加える旨の改正法であり、民法典は形式上も一つの法典であるとする立場が採用されていた(例えば、民法第四編又は第五編の条文を引用する際にも「民法(明治29年法律第89号)」として引用される。ただし、例外的に(誤って?)「民法(明治31年法律第9号)」として引用される例がないわけではない。)。
この点については、口語化と保証制度の見直しを主な目的とした民法の一部を改正する法律(平成16年法律第147号)が2005年に施行されたことに伴い民法の目次の入換えがされ、入換後の目次が一体となっていることから、今後は一つの法典として理解することになるとの理解も唱えられている。
制定当時の民法と現在の民法は形式上は同じ法律であるが、家族法についてはその内容に大きな変化が加えられているため、戦後の改正以前の民法(特に家族法)を「明治民法」と称することもある。
なお、日本における民法編纂の歴史については民法典論争を、民法の口語化については民法現代語化を参照
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[編集] 民法典の構成
日本の民法典の編成は、パンデクテン方式を採用している。本則は第1条から第1044条で構成される。講学上は、第1〜3編を財産法、第4、5編を家族法として扱う(ただし、第4、5編をまとめて「家族法」とすることの問題点につき、家族法の項目を参照)。
[編集] 財産法の構成
財産法が対象とする法律関係に関するルールは、所有関係に関するルール(所有権に関する法)、契約関係に関するルール(契約法)、侵害関係に関するルール(不法行為法)に分けられる。このうち後2者を統合して、特定の者が別の特定の者に対し一定の給付を求めることができる地位を債権として抽象化し、残りについて、物を直接に支配する権利、すなわち特定の者が全ての者に対して主張できる地位である物権という概念で把握する構成が採用されている。
そして、債権として抽象化された地位・権利に関しては、債権の発生原因として契約法にも不法行為法にも該当しないものがあるため、そのような法律関係に関する概念が別途立てられる(事務管理、不当利得)。物権に関しても、所有権を物権として抽象化したことに伴い、所有権として把握される権能の一部を内容とする権利に関する規定も必要になる(制限物権)。また、物権と債権に共通するルールも存在する(民法総則)。
このような点から、財産法は以下のように構成されている。
第1編 総則
第1章 通則
第2章 人
第3章 法人
第4章 物
第5章 法律行為
第6章 期間の計算
第7章 時効
第2編 物権(物権法)
第1章 総則
第2章 占有権
第3章 所有権
用益物権
第4章 地上権
第5章 永小作権
第6章 地役権
担保物権
第7章 留置権
第8章 先取特権
第9章 質権
第10章 抵当権
第3編 債権
第1章 総則
債権の目的 - 債権の効力 - 多数当事者の債権 - 債権譲渡 - 債権の消滅
第2章 契約(契約法)
総則 - 贈与 - 売買 - 交換 - 消費貸借 - 使用貸借 - 賃貸借 - 雇用 - 請負 - 委任 - 寄託 - 組合 - 終身定期金 - 和解
第3章 事務管理
第4章 不当利得
第5章 不法行為
[編集] 家族法の構成
家族法のうち、親族関係に関するルール(親族法)は、夫婦関係を規律するルール(婚姻法)、親子関係を規律するルール(親子法)がまず切り分けられるが、その他の親族関係についても扶養義務を中心としたルールが必要となる。また、親権に関するルールは親子法に含まれるが、編成上は親子法から切り分けられて規定されている。これは成年後見制度と一括して制限行為能力者に対する監督に関するルールとして把握することによるものと考えられる。
相続法については、主として相続人に関するルール、相続財産に関するルール、相続財産の分割に関するルール、相続財産の清算に関するルールに分けられる。その他、遺言に関して、遺言の内容が必ずしも相続に関することを含まないこともあり、いわゆる遺言法を相続法と区別する立法もあるが、日本では相続法に含めて立法化しており、それに伴い相続による生活保障と遺言との調整の観点から、遺留分に関するルールを置いている。もっとも、これらを通じた規定について総則にまとめる方式が採用されていることもあり、法文上は、これらのルールが明確に区別されていない部分がある。
このような点から、家族法は以下のように構成されている。
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第4編 親族(親族法)
第1章 総則
第2章 婚姻
婚姻の成立 - 婚姻の効力 - 夫婦財産制 - 離婚
第3章 親子
実子 - 養子
第4章 親権
第5章 後見
第6章 保佐及び補助
(制限行為能力者の監督に関する制度)
第7章 扶養
第5編 相続(相続法)
第1章 総則
第2章 相続人
第3章 相続の効力
第4章 相続の承認及び放棄
第5章 財産分離
第6章 相続人の不存在
第7章 遺言
第8章 遺留分
[編集] 民法理解の要点
民法典の構成は以上のとおりであるが、実際には、以下のように理解することができる。
[編集] 権利の主体
民法において、権利の主体は人である。ここにいう人には、自然人 (人間) と法人がある。 法人とは、人間が集まった集団・団体等について、法律が人間と同様に人格・法主体性を認めたものであり、株式会社等の会社や、社団法人・財団法人等がある。
自然人と法人に人格ないし法主体性があるということは、例えば、金銭支払請求権や、ボールペン、土地・建物の所有権等を有する資格が認められるということである。
これに対して、自然人・法人以外の物(動物等)には、法主体性は認められない。動物は、植物、ボールペン、土地・建物等と同様、物 (ぶつ) の一種として扱われる。例えば飼い主が飼い犬にえさを与えても、飼い犬にえさの所有権が認められるわけではない。犬はあくまで飼い主の所有権の客体であって、所有権の主体となることはできないからである。 現代においては、人間は物とはならず、人間が所有権の客体となることはない。
[編集] 債権と物権
人と物の区別に対応して、民法上の主要な権利として、債権と物権の区別がある。
債権
債権(さいけん)とは、人が、他人に対して、ある行為(給付)を要求する権利である。人に対する権利であり、対人権ともいう。
債権の内容としては、代金の支払いや不動産の登記、人を目的地まで運ぶこと(運送)、家庭教師として指導することなどさまざまなものがある。その発生原因には、契約、不当利得、事務管理、不法行為があるが、契約による場合は原則として自由にその内容を定めることができる。請求権概念との関係については議論がある。
なお、「債務」とは債権を義務者(債務者)の側から見た表現にすぎず、債権と債務が意味する権利義務関係は同一のものである。
物権
物権(ぶっけん)とは、ある物を支配し、利用・処分することのできる権利である。物に対する権利であり、対物権ともいう。
債権と異なり、物権の種類は、所有権・抵当権等、法令に定められたものしか認められない(物権法定主義、175条)。
[編集] 契約
[編集] 債権の発生原因としての契約
民法を理解する上で最も複雑なのは、契約を含む債権の発生から履行・消滅に至るフロー・構造であり(根拠条文が各所に散在している)、これらの全体像を理解するには、まず債権の発生原因ごとに理解するのが有益である。
債権の発生原因として、民法は、契約(民法第3編第2章)・事務管理(同第3章)・不当利得(同第4章)・不法行為(同第5章)の4つを定めているほか、物権編の中を含め各所に債権発生原因を定めている。実際には、契約の場合と不法行為の場合では、債権の発生の仕方も、履行・消滅のプロセスもかなり異なるが、民法は、いずれも債権を発生させる点で共通しているとして、統一的な理解をしようとしているといえる。
ともかくも、債権の発生原因の中で最も重要なものは契約であり、民法の第3編第2章「契約」以外の条文も、多くは契約を念頭に置いて規定されているため、まず、契約の成立・履行・消滅のプロセスについて説明する。
[編集] 契約の成立
契約は、法律行為(90条以下参照)の一種であり、当事者の意思表示の合致によって成立する。これを分析すると、一方当事者の申込みという意思表示に対して、他方当事者が承諾の意思表示をすることによって、契約が成立する(521条以下参照)。